令和元年度 移植医療セミナー

 (11月30日 小松市民病院)

 

                         令和 元年11月16日(土)   金沢医療センター

 

                                11月30日(土)   小松市民病院

 

  腎移植の現状          金沢医科大学病院  腎臓内科教授  横 山  仁  先生

 

  献腎移植を受けて思うこと   腎移植者 2名の方

 

  

腎移植の現状

 

            金沢医科大学 腎臓内科教授

                   横 山  仁 先生

  

透析療法(血液透析、腹膜透析)と腎移植のメリット、デメリット

 

             透 析              腎移植 

腎機能       悪いまま             かなり正常に近い 

          貧血、腎代謝異常、アミロイド 

沈着、動脈硬化、低栄養などの 

問題は十分解決できない 

必要な薬剤     慢性腎不全の諸問題に対する薬剤  免疫抑制剤とその 

          (貧血、骨代謝機能、高血圧など)   副作用に対する薬剤 

生活の制約     週3回、4時間程度の透析     ほとんどない   

社会復帰率     低い               高い 

味覚        低下               改善 

通院回数      週3回              移植後1年以降は 

                           月1 

感染の注意     必要               重要 

食事        水分制限・食事制限        水分・食事制限なし 

          (カリウム、リン、塩分など)  

味覚        低下               改善 

合併症       動脈硬化、骨障害、        手術合併症、拒絶反応、 

          アミロイド症、感染症、      免疫抑制剤の副作用 

                心不全、悪性腫瘍など        糖尿病(PTDM) 

                             悪性新生物 

医療費負担     ほとんど公費負担実際は         ほとんど公費負担 

実際は4050万円/年       実際は15万円/ 

                 (最初の年は400万円)  

医療を受ける機会、 無条件              ドナーが必要 

条件        だれでもいつでも受けられる   (毎年、希望者の1%程度) 

                            いつ受けられるか不明

  

生体腎移植・献腎移植の特徴

 

            生体腎移植析            献腎移植 

提供者(ドナー)  6親等以内の血族          心停止下、脳死下 

3親等以内の姻族 

手術        計画的な手術が可能         緊急手術

透析        早期に透析離脱可能         移植後12週程度の透析が必要な

                            場合がある 

成績        献腎に比べて生着率が良い      生体に比べて生着率が劣る近年は改善 

問題点       健康なドナーへの負担        長期の待機期間が必要 

 

腎移植を受けてよかった理由

 

・透析を受けなくてもよい

・食事・水分の制限がない

・健常者と同じ生活ができる

・時間の制約がない

・移植後体調がよい

・生きていることに感謝できる

・生きる喜びがある

・社会復帰ができた

  

生体腎移植におけるドナーの留意点

 

・ドナーとなる方が心配されること、よく質問されること

 手術のリスク

 術後の予後等のリスク

・術前・術後の生活において特に留意すること

 片腎になりますので、慢性腎臓病に準じたケアが必要

  定期的な腎機能のチェック

  血圧・肥満・糖尿病・喫煙などの生活習慣の注意

 

レシピエントの選択基準(腎臓

 

・前提条件

  血液型  ABO式血液型がドナーと一致及び適合

  抗体反応 リンパ球交差試験 陰性

・優先順位

 前提条件を満たす候補者の優先順位は以下の順に決定する。

  親族:親族優先提供の意思表示がある場合

  血液型:適合より一致を優先

  20歳未満の臓器提供では20歳未満の移植希望者を優先

  下記1~4のポイント合計点数が高い順とする。

 

    1.搬送時間 

  2.HLAの適合度 

  3.待機日数 

  4.未成年者

  

誰でも献腎移植登録は可能でしょうか 

 

・ほとんどの方が可能です。

・ただし、医学的な理由でお断りさせていただく可能性もあります。

・移植施設へご連絡いただき、少しでも腎移植に興味、関心のある方は移植施設への受診

 をお願いします。

  

プレエンプティブ登録について

 

1 申請時から1年前後で腎代替療法が必要になると予測される進行性腎機能障害の場合で、かつ

2 19歳以上では、eGFR15mL/min/1.73未満

3 19歳未満または、腎移植後で移植腎機能の進行してきた場合では、

                 eGFR20mL/min/1.73未満

 

20歳未満、もしくは膵腎同時移植等は、透析療法開始後と異なり、審査が必要。

移植施設から日本臓器移植ネットワークへ必要書類を提出することで登録可能。

  

ハイリスク要因 

 

【既往症】

 虚血性心疾患・CVA・ASO・血管合併症・弁膜症

 既移植者

 原疾患:巣状分節性糸球体硬化症・糖尿病性腎症

 輸血歴

 妊娠歴

 薬剤アレルギー

【併存病変】

 %肺活量70以下

 肝炎ウィルス(HBV、HCV)抗体陽性

  下部尿路疾患

  繰り返す十二指腸潰瘍

  精神疾患 

【その他】

  70歳以上

  透析歴20年以上

  抗血栓療法中

  BMI30Kg/㎡以上(高度肥満)

  自己管理不能

  外科的な手術リスク(高度の動脈硬化など)

   判断に難渋する場合は迷わず専門医に紹介、検討します

 

献腎移植登録更新時検査  

 

腫瘍マーカー、感染症、胃内視鏡、大腸内視鏡、便潜血検査、胸部~骨盤腔CT、頭頸部CT、歯科、心電図・胸部XP、婦人科乳癌検査 

  

移植直前に「献腎移植ができない」と判断された実例 

 

 医学的理由

   齲歯、副鼻腔炎等の慢性感染症(敗血症の危険)

    抗血小板(パナルジン、プラビックス等)内服(手術時の止血困難)

    5年以内に悪性腫瘍を指摘されていた (悪性新生物の再燃)

  社会的理由

 仕事や介護により多忙

  実際に移植への踏ん切りがつかない

 

  献腎移植待機期間は、平均14年8か月(2017年3月末日)

  早期の登録をおすすめする。

 透析前に献腎移植登録をすることも可能であり、医療関係者の方からの情報提供も必要。

 腎移植可能かどうかは、移植登録施設に受信して、判断を仰いでください。

 登録継続には、年1回以上の定期診察が必要。 

 


 

献腎移植を受けて思うこと(1)

 

                           Sさん (石川県)                                           

 私は、現在70歳。高校を卒業してから就職したが、食事なども不規則で、心身ともに過酷な仕事で、そんな生活が16~17年続いた頃、健康診断で、尿にたんぱくと血尿が出ているとのことで、調べていただくと「慢性的な腎炎」との診断。定期検査を受けることになっていたが、とくに体のどこか具合が悪いということもないので、仕事の都合でよくパスしていた。昭和62年の秋に風邪をこじらせて精密検査を受けたところ、腎臓の機能が低下しており、いつ透析導入になってもおかしくないので、万が一のために腕にシャントを造っておきましょうと、すぐに手術をしていただいた。 

その翌年、39歳の時に透析を導入することになった。今までの生活が一変することになり、営業セールス職から内勤事務職に変更していただいた。当初は、週に2回の透析だったが、しばらくすると、おしっこが出なくなり、週3回、透析しなくてはならなくなった。その間、水分の取りすぎによる体重増加が一番の悩みであった。石川県腎友会にも入会して、献腎移植の希望者の登録も、毎年更新していた。 

透析治療が16年間続いて、55歳の時、平成16年7月の早朝5時頃だったと思う。主治医の先生から電話で、「腎臓の提供者が出まして、あなたに当たるかは、決まってはいませんが、マッチングテストで、あなたにOKが出ました。 腎臓移植する意志はありますか? 体調は大丈夫ですか?」との連絡。どう返事をしようか迷っていると、「あなたが受けなければ、次の方に順番が回っていきますよ!」と言われ、心の準備が整わないまま、とっさに「先生、移植させて下さい。」とお願いをした。

 「では、後で連絡しますから、自宅で待機して下さい。」と言われたが、8時になっても連絡がなかったので、他の人に決まってしまったのだと思い、出社したが、10時頃、先生から会社へ電話があり、「君への移植が決定したから、すぐに準備して下さい。」とのこと。すぐ支店長に事情を報告すると「なかなか貰えるものではない。すごいことじゃないか! 仕事はなんとかするから、すぐに行きなさい。」と、背中を押され、事務引継ぎをしていると、今度は、医科大学病院の先生から電話があり、「午後2時ぐらいまでに来て下さい。そのまま、来ればいいから」と。すぐにマイカーで病院に向った。 

医科大学病院に到着すると、先生が待機しており、すぐに手術の準備が始まった。採血、心電図、エコー、CT、など、大急ぎで検査、検査である。泌尿器科で手術の説明を受け、麻酔科で問診、最後に人工透析を4時間受けてから、手術が始まったと記憶している。4時間から5時間にも渡る移植手術で、たくさんのスタッフ、先生方に大変お世話になり、感謝で一杯である。

 翌日、目が覚めると、ICUのベッドの上である。まだもうろうとしていたが、手術が終わった安堵感で、ほっとしていた。しばらくしてから、執刀医の先生と妻がマスクをして、面会に来てくれた時には、「先生、ありがとう」と、大泣きをしてしまった。移植後は、拒絶反応を抑えるために、大量の免疫抑制剤を投与していて、感染予防のために、付き添いや、長時間の面会はできなかった。この免疫抑制剤は、生涯、飲み続けることになるが、移植後の経過を見ながら減らされていった。 

日増しに体調が回復したので、痛みは残るものの、ICUでの滞在は3~4日で、泌尿器科の看護ステーション前の個室に転室する事ができた。個室でも面会は家族のみに制限され、手の消毒、マスク着用など、感染予防には最善の注意を払った。 

私の場合、透析治療を16年間、続けていたために、おしっこが、まったく出なくなっていたが、手術後、1週間目ぐらいだったと思うが、尿意をもよおし、ちょっと出た時には、本当に感動した。始めは100300ccであったが、その後、利尿剤を飲んだりして、いっきに、10001500ccと増えたように、記憶している。 

この時点でも、透析治療は週3回、続けられていたが、透析時の除水量は、尿が出ることにより、だんだん減っていった。それとともに、クレアチニンや、尿素窒素BUNの値が、徐々に改善されていった。移植後、20日すぎた頃、検査データが改善したので、透析から完全に離脱することができ、泌尿器科から、腎臓内科の個室に転室した。 

それからは、先生方のご指導をいただきながら、移植腎が自分の体に、無事、生着することを祈る毎日であった。その後、2か月の入院生活を送ることになるのだが、退院までに軽い拒絶反応が2回ほどあり、ステロイドの投与を受けた。クレアチニンやBUNなどのデータが安定しなくて、気の重い戦いの日々が続くことになったが、その安定しない原因は虫歯にあった。歯槽膿漏になっていて、時々、出血したため、そこからのバイキンが原因であった。虫歯の治療によって改善されていった。 

10月の中ごろから、退院の準備のために外泊の許可が出て、看護師から感染予防などのいろいろな注意を受け、土日の一泊二日で自宅に帰れる事になった。それと並行して、移植腎の最終の機能検査のため、腎生検や、エコー、CT、アイソトープ、腎クリアランス、MRI、全身骨、胃カメラなどなどの、最終検査が2週間にわたり行われた。 

そして、11月に無事退院となった。この3か月間、本当に、たくさんの先生方、看護師の皆さんに、感謝しても感謝しきれないほどお世話になり、言葉に言い尽くせない思いで一杯である。 

その当時、私は三つの腎臓を持っていた。普通の人は、今までの悪くなった腎臓を取り除いてから、提供いただいた腎臓と入れ替えると思いがちだが、自分自身の腎臓はすでに萎縮して、その役割を終え、背中の方に2つ残っている。新しく提供いただいたのは左側の腎臓で、左側下腹部の前の方に移植されている。この新しくいただいた1つの移植腎によって、私の体をすべてカバーしてくれている。日常生活には、全く支障はないが、提供いただいた腎臓に、負担のかからない生活をして、大切に守っていかなくてはならない。 

退院後は職場復帰をし、長い間迷惑をかけた事をお詫びして、いつもの仕事に戻った。仕事が終わってからも、透析に行く必要がなくなり、以前と違う生活があって、何にも変えがたい喜びであった。 

後日、透析をしていた病院、スタッフの皆さんにお礼のご挨拶に伺うと、移植がうまくいった事を自分の事のように喜んでくださり本当に感謝であった。16年間の透析治療、本当に有難うございました。 

退院後、2か月位は、毎週一回、定期検診で、拒絶反応や検査データを調べるため、医科大学病院へ通院することになる。その後は、隔週、一週間おきになり、安定してきたので、6か月目からは、二週間おきになった。それから、一年後の7月に10日間、一年目の精密検査のため入院。腎生検などの、各種検査を行い、その結果、拒絶反応もなく、移植腎も順調に活動しているとのことで、一か月に一度の通院でよくなった。 

仕事は、翌年、ますます多忙を極め、移植後2年目の春先から動悸がするようになり、その後に不整脈を発症した。急に胸が痛くなることが、たびたび起こり、透析を受けていた病院の循環器内科で、投薬治療を受けることにした。仕事中にも不整脈が起こり、病院へかけつけたがおさまらず、麻酔をかけてから、AEDを使って治していただいたことも何度かあった。その後、頻繁に不整脈が出るようになってきたので、体のことや移植腎のことを考え、57歳で早期退職した。そして、投薬治療では完治しない事がわかり、血栓ができて脳梗塞を起こす危険性があるとのことで、早期に治療を開始することになり、紹介された病院を受診することになり、平成18年6月に、心臓カテーテルアブレーションを施術していただいた。手術は3時間かかったが、無事終了して感謝の思いで一杯である。今、思えば、透析をしていた時代に体重の1割近くまで除水をかけ、心臓に負担をかけていたことが、不整脈の原因になっているのではないかと反省している。 

その後、平成23年に、右側の固有腎に大きな嚢胞があり、摘出した方がいいとのことで、摘出手術をしていただき、その細胞を調べたところ、癌細胞が見つかった。その後、転移も見られないとのことで一安心だが、これからは癌に対しても注意を払う必要が出てきた。 

その翌年24年8月に、急に腹痛がひどくなり、トイレへ駆け込んでも便が出ず、嘔吐するようにもなり、てっきり食中毒と思い込み、近くの町医者で点滴治療をしても治らず、急遽、救急車で病院へ駆け込んだ。検査の結果、大腸から便が流出しており、一刻も早く手術が必要なのだが、移植腎の保護の必要があるため、移植した病院に救急搬送していただいた。すぐに、開腹手術が行われ、「S状結腸の穿孔による腹膜炎」で腹腔内が高度に汚染されており、生理食塩水で十分に洗浄し、人工肛門を造設する手術となった。 

生死を分ける、大変な手術を執刀くださった先生には感謝でいっぱいである。手術中も、手術後のICUでも3日間、人工透析を続けながらの治療で、移植腎を守っていただいていた。また、大腸の精密検査でポリープが見つかり、後日、切除をしていただいた。 

その後も、裏山から転落して、左側の固有腎にある嚢胞が破裂しており、緊急入院とか、頻尿と排尿痛がひどく、発熱もあり、夜間外来で、腎盂腎炎(大腸菌汚染)で、緊急入院とか、病気には、事欠かないが、そのたびに、命を長らえさせていただいている。 

 今日で、献腎移植後、15年3か月余を迎えることになる。これからも精進をね、感染症に最大限の注意を払い、長生きしていきたいと思っている。それには、「免疫抑制薬は、休まずに、服用する事が大切です」と言われており、毎日きちんと服用していかねばならない。拒絶反応が怖いからである。 

献腎移植の希望者登録をされている方が、おられると思うが、献腎移植はなかなかやって来ない。ところが、やって来る時は、突然にやって来る。提供者が現れた時には、自分で移植する、強い意志を、常に持っている事が大切である。それと、健康状態をいつも良好に保ち、移植に耐えうる体力をつけておくことである。虫歯などは、日頃から十分に注意して、治療しておく事が大切である。 

お勤めされている方は、いつどんな急な時にも、移植手術のために2~3か月の休暇がとれるように、協力体制をお願いしておき、家族にもその心構えを話して、準備を整えておくことが大切だと思う。 

私のような献腎移植によって、もっともっとたくさんの方が、幸せになれることを願ってやまない。

 


 

献腎移植を受けて思うこと(2)

 

Nさん (石川県)                        

今年になって、義兄が亡くなった。私が透析を始めたころ、「わしの腎臓一個やるわいや」と言っていた。身内以外の生体腎移植が許されていない頃でできなかったが、うれしかった。私が順調に透析治療を続け、幸運にも献腎移植を受けるときには喜んでくれた。兄も腎臓の機能が悪化し、もうすぐ透析に入るとき、私は自分の経験から、透析は遅ければ遅いほどいいとアドバイスしてしまった。また透析に入る前には、透析センターの予約は早くした方がよいともいった。ある病院では長期間の透析は受けられないと聞いたことから、もう少し早く透析に入っていれば、献腎移植の登録もできたかもしれない。彼に希望ではなく絶望だけを与えたのでは、などと、彼の死後、何度も思ったことがある。 

私は、22歳の誕生日に透析生活に入った。もともと腎機能がよくなかった私は21歳の時に、あと5年で透析に入ると告げられた。絶望して入院中の病院の窓から飛び降りようとしたが、下に落ちたら痛いだろうなと考えて、それ以後、衝動的なことは考ないことにした。幸いなことに透析期間は18年半で終わり、献腎移植の知らせを聞いたときは、宝くじの一等をあてたような気分になった。とにかくうれしかった。眼の前の景色が違って見える。 

ICUでの記憶は痛みとうとうとと大量の排泄物。個室に移り、外の景色を見ると新しい目標が生まれてきた。なんとかベッドから離れ、外の景色をみたかった。24時間安静は絶対無理。元気になっていくのだから、動くなというのは無理。移植を受けた季節がよかった。体調がよくなり、自分の気持ちが外へ外へと向かうようになった。建物の外にでた、あれほど鮮やかな新緑に包まれたのは初めてだった。病院そばの遊歩道を歩いた。放水路のところで季節はずれの雪になったが、寒くはなかった。いよいよ退院。スタッフの方には大きな感謝の気持ちで、よろこびが溢れてくる。新しい人生が始まる。透析に戻るのではないか、という怖れを感じるひまはなかった。希望がどんどん満ち溢れてくる。あれもしたい、これもしたい、それを一つ一つ話していくのはとても楽しい。透析中は考えられもしない、生野菜、果物を満足するまで食べられる。水は一日2000CCまで飲める。薬を飲み忘れて病院に相談したこともある。あるとき、自分に課している大事なこと、薬を飲むことを忘れ、ナースセンターに電話し、対処療法をうかがった。すぐに忘れた薬を飲み、さらに6時間後に飲み、服薬のサイクルを元に戻す、という指示いただいた。その後も、薬の飲み忘れたときは、高熱がでることがあり、医科大学病院で点滴を受けると元気になり、翌日には仕事にも行けるようになった。免疫抑制剤のためか全身に発疹ができ、赤くはれ上がったこともある。 

日光浴がよいというので芝生のうえで寝ていたら、変に思われたこともある。時間のある時は歩いて体力をつけるようにした。 

透析中には、できなかった一泊旅行や連泊旅行をした。北海道でレンタカーを借り、千歳から知床にまで回ったことがある。初めての道。初めてドライブレコーダーに頼っての運転。運転は私で、助手席にはよき理解者である妻。 

久しぶりに熱がでて、病院に電話。「結核です。緊急入院してください」と。一番大きな落とし穴が待っていた。非定型で人に感染することはないということで退院したが、3か月で治癒するはずが今でも薬を飲んでいる。

年のせいか少しずつ体力が落ち、去年は腸閉塞にかかり、よく食べられない。身体がきつくなってきた。それでも献腎移植を受けたことは後悔していない。非常に幸運に恵まれた。移植を受けなかったら私の人生はとっくに終わっていた。献腎移植のおかげで未来のある人生を生きている。 

透析を受けているよりずっと楽しい。移植していただいたことに感謝の気持ちでいっぱいである。皆様も希望の灯を見失わないようにしてください。 

最後に、移植が実現できるように環境整備をしていただいた方や、体の一部を提供していただいた方には感謝の気持ちでいっぱいである。これからも健康で充実した人生を送っていきたい。 

 

平成30年度 移植医療セミナー

 (11月24日 浅ノ川総合病院)

 

                     平成30年11月17日(土)     恵寿総合病院

                             11月24日(土)     浅ノ川総合病院

 

 

 腎移植の現状          金沢医科大学病院   腎臓内科教授  横 山 仁 先生

                         

 献腎移植を受けて思うこと  献腎移植者 2人の方から   

 

平成29年度 移植医療セミナー

田中達郎先生

金沢医科大学病院泌尿器科教授              

(写真は 1月13日(土) 小松市民病院)

      腎移植の現状
       ~外科的立場から~

 

 

 

 


献腎移植の現状


脳死下  :一定時間があり、行動計画を立てることができる。
心停止下:臓器提供までの時間が、非常に短い場合も長い場合もある。

すべての人が提供できる。
脳死下では、肺、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、眼球が提供できる。
心停止では、提供できるのは、膵臓、腎臓、眼球に限られる。
阻血時間  心臓が動いているときは阻血はおきない。血液の動きがなくなれば、
      酸素はゆきとどかなくなり、急激に壊死になる。冷却した方がよい。
温阻血時間 脳死下では阻血はないが、提供のための処置はむずかしい。
      心停止下では12~30分。腎臓は、30分が限度。
冷阻血時間 冷えた状態では酸素の消費が少なく、臓器の損傷は少ない。
      冷却時間は48時間で十分。ただし、腎臓は24時間。
生着率   温阻血時間に対応。脳死下の方が高い。



献腎移植(脳死 VS 心臓死)

            脳死下提供       心臓死下提供


臓器提供までの時間   一定の時間があり    極端に短い場合も
            計画できる       長い場合もある
    

提供できる臓器、組織  肺、心臓、肝臓、膵臓、 腎臓、膵臓、眼球
            腎臓、小腸、眼球

温阻血時間       無           数分から30分

冷阻血時間       各臓器で異なる     各臓器で異なる

生着率                  >



 全国の臓器提供数の推移を見ると、脳死は増えているが心臓死が急激に減少。結果的に献腎移植は減少している。
 脳死下から膵腎同時移植に2割が提供されるので、県内の心臓死からの臓器提供が必要。
過去2年間、県内では臓器の提供も受ける件数もゼロ。現在は、提供と同一県の移植が優先される。県内からの提供がなければ、移植につながらない。
 数少ない提供腎をいかに有効に活用できるか、心臓死からの提供腎の腎機能をいかに保てるか。



献腎移植登録者の自己管理
 透析=抗血栓療法の有無が問題になる。
 パナルジン、フラビックス内服中は適応外。
 動脈硬化の症状が強いと、石灰化のため移植には適さない(吻合ができない)。
 多発性嚢胞腎=移植は困難になるが、手術例はある。
 大きくなったのを除去し、その後移植
 
⇒ 平成28年度以降、1年に1回以上受診と評価が必要となった。
  ・外科的にむずかしいところがあるか
  ・内科的な判断(適応性の判断)


 
献腎移植の適応外患者


 ・担癌・悪性腫瘍術後5年以内
 ・肝硬変
 ・1年以内の血管合併症:心筋梗塞・脳出血(梗塞)・ASO(肢趾切断)
 ・難治性下肢壊疽を有する糖尿病性腎症
 ・EF30%の心機能低下
 ・HIV感染者
 ・Oxalosis
 ・65歳以上糖尿病性腎症で2種類以上の血管合併症既往
 ・活動性の感染症、治療中の感染症(齲歯、副鼻腔炎を含む)
 ・抗血栓療法のうちチエノピリシン誘導体(パナルジン、フラビックス)内服中の患者

腎臓は心臓が停止してからでも提供いただけます。
貴重なご意思を生かすため、よりよい状態で腎臓をいただきます。
  温阻血時間を短くするために死体内潅流にポンプを使用します。
  死体内潅流には準備が必要です。
  まずご一報を!

大串勇気先生

金沢医科大学病院腎臓内科助教

(写真は12月 2日(土) 恵寿総合病院)          

   献腎移植登録者の自己管理

    ~内科的管理と合併症~


 

 


生体移植・献腎移植の特徴

        生体腎移植         献腎移植

ドナー     6親等以内の血族      心停止もしくは脳死下
        3親等以内の姻族 

手 術     計画的な手術が可能     緊急手術          

透 析     早期に透析離脱可能     移植後1~2週間程度の 
                      透析が必要になる場合 
                      がある

成 績     献腎移植に比べて生着率   生体腎移植に比べ劣る
        がよい

問題点     健康なドナーへの負担    長期の待機期間が必要



レシピエント選択基準(腎臓)

前提条件

血液型   ABO式血液型がドナーと一致及び適合

抗体反応  リンパ球交差試験 陰性

優先順位

①親族: 親族優先提供の意思表示がある場合
②血液型:適合より一致を優先
③下記1~4ポイント合計点数が高い順とする
 
 1 搬送時間  腎臓に血流がない時間(総阻血時間)を短くするため
         に提供者発生施設と同一都道府県の移植施設を希望
         している方のポイントが高い。                   

 2 HLAの適合度 提供者のHLA型と適合していない数(不適合:ミス
         マッチ数)が少ない方のポイントが高い。

 3 待機日数  長く待機している移植希望者のポイントが高くなる。 
         (透析日数ではなくネットワークに登録している日数)


 4 未成年者  16歳未満:14点、16歳以上20歳未満:12点 


移植直前に献腎移植不可だった実例

・齲歯、副鼻腔炎等の慢性感染症
・抗血小板剤(パナルジン、プラビックス等)内服
・5年以内に悪性腫瘍を指摘されていた
・仕事や介護により多忙
・実際に移植への踏ん切りがつかない

献腎移植登録更新時検査

・腫瘍マーカー 初回受診時と50歳以上(1回/2年)
・感染症    毎年もしくは輸血後
・胃内視鏡   初回受診時と40歳以上(毎年)内
・大腸内視鏡  50歳以上(1回/2年)
・便潜血検査  毎年
・胸部~骨盤腔CT  毎年
・頭頸部CT(副鼻腔含む)  初回受診時と5年毎
・歯科     毎年:受診直前1~2か月以内
・心電図・胸部XP  毎年
・婦人科・乳癌検診  2年毎、40歳以上(毎年)

献腎移植待機期間は2015年の時点で平均13.8年であり、腎移植に興味や希望のある方は早期の登録をおススメします。

現在では透析前に献腎移植登録を行うことも可能であり、医療関係者の方からの情報提示も必要と考えます。

御自身が腎移植加納かどうかは移植登録施設に受診していただき、判断を仰いでください。